研究概要 |
免疫系の中心をなすT細胞の分化やクローン選択そして免疫応答に関しては未解決の問題が多くあるが、その異常に基づく自己免疫疾患、あるいは免疫寛容を必要とする移植免疫の人為的制御は極めて興味ある課題である。特に、臓器移植が医療として定着するにはより安全で、特異的しかも異なるメカニズムを有するの免疫抑制剤の開発が急務である。本研究では、まず新しい作用メカニズムを有するアロ移植組織拒絶抑制因子の開発を目的としてマウス混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction,MLR)抑制作用を指標に好熱菌産物及び成分につきスクリーニングを行なった。MLRはresponderとしてC57/BL(主要組織適合遺伝子複合体[MHC]抗原;H-2^b)、stimulatorとしてBALB/C(MHC;H-2^d)を用いた。その結果、変性好熱菌Bacillus stearothermophilus UK-563株の自己消化物テブリのエタノール抽出物に活性を見い出し、塩化メチレン/水分配、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、順相HPLCにより作用本体を含む脂質成分Fr.5-Bを分離した。Fr.5-BはCon AやLPS刺激による非特異的なリンパ球増殖反応は抑制せず、抗原特異的であった。このものは細胞傷害性T細胞の発現に対しても抑制作用を示し、毒性は示さなかった。さらにMLR開始48時間後にサンプルを加えても、MLR開始と同時に加えた場合と同様に反応を抑制した。またインターフェロンγによるマクロファージMHCクラスII(la)抗原の発現に対して抑制を示した。このように、Fr.5-Bはマイトーゲン刺激によるリンパ球増殖、MLRに対する作用時間およびla抗原発現においてシクロスポリンAとは全く異なる作用メカニズムを示した。現在のところFr.5-Bの作用点として抗原提示細胞のla抗原発現が強く示唆されるが、詳細はについてはさらに検討を加えなければならない。
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