多形核白血球(好中球)は細菌感染に対する重要な生体防御機構の一つである。貪食刺激により好中球細胞膜上のNADPHオキシダーゼが活性化され殺菌性の活性酸素誘導体を産生する。このNADPHオキシダーゼ自体やこの酵素の活性化機構は、現在に至るまで十分には解明されていない。近年、無細胞系においてオキシダーゼの活性化が可能となり、この酵素は、種々の膜因子、細胞質因子より構成される複合酵素系であることが明らかになった。従来より我々は、モルモット好中球を用いて、この酵素の活性化には46K蛋白のリン酸化が関与していることを示してきたが、現在ではこの蛋白と同等のものがヒトにおいてはp47-phoxと呼ばれ、NADPHオキシダーゼを活性化する細胞質活性化因子であることが明らかにされている。我々はこの酵素が活性化状態から不活性化状態へ復帰するという現象を用いて、46K蛋白のリン酸化がNADPHオキシダーゼの活性化に重要な役割を演じていることを解明することを試みた。 活性化した細胞より調製した細胞膜を用い、この蛋白の脱リン酸化を引き起こした。その結果、活性化膜のNADPHオキシダーゼが有意に失活した。さらに脱リン酸化酵素阻害剤添加により、オキシダーゼの失活は抑制された。また走化性ペプチド刺激した好中球による弱くて一過的なオキシダーゼ活性化は、この脱リン酸化阻害剤処理により持続的に増強された。 これらの結果はNADPHオキシダーゼが不活性化されるには蛋白質の脱リン酸化が必要であり、また蛋白質脱リン酸化の阻害によってもNADPHオキシダーゼが活性化されることを明らかにした。
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