研究概要 |
1.Annexin-Vの抗血液凝固作用部位ペプチドの同定:Annexin-Vは分子量36,500で319個のアミノ酸残基から成る単純蛋白質であり、Ca^<2+>存在下で強い抗凝固作用を持つ。光酸化あるいは各種化学修飾剤を用いた研究から、本蛋白質の作用部位にHis残基が深く関与していることが明かとなった。Annexin-Vの作用部位の同定は、本蛋白質をトリプシンで限定分解した後、HPCLを用いて分離し、得られた多数の個々のペプチド画分について各々抗凝固作用を測定し、作用を持つペプチドを同定した。その結果、SHLRKV及びDHTLIR配列を含むペプチドに強い抗凝固作用が認められた。 2.Annexin-V及び作用部位ペプチドの抗血栓作用:肺塞栓モデルマウスに対する作用を検討した結果、Annexin-Vは強い抗血栓作用を示し、肺塞栓モデルマウスに対し、著明な延命効果を示した。また、作用部位ペプチド、SHLRKV、DHTLIR及びこれらの化学合成ペプチドも類似した作用を示した。 3.Annexin-Vの細胞内局在:Annexin-Vに対するモノクローナル抗体を用い、間接蛍光抗体法によって本蛋白質の各種培養細胞内における局在を調べた結果、cell line化された大腸癌細胞(WiDr,Colo320DM,Colo202,DLD-1)膵臓癌細胞(PANC-1,MIA PaCa-2)などでは細胞膜内壁近傍に局在することが判明した。これらの結果から、本蛋白質は細胞増殖に関与している可能性が示唆された。 4.抗炎症作用:Annexin-V(Recombinant annexin-V)はCa^<2+>存在下Phospholipase A2を阻害した。Phospholipase A2は炎症と密接に関連しており、Annexin-Vは抗炎症作用を持つことが推察された。
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