生体内におけるカルシウム(Ca)は、生体情報伝達因子としてのホルモンの作用を細胞内に伝え、細胞機能を調節する働きを有する。Ca^<2+>結合蛋白質はその制御蛋白質である。本研究では、レギュカルチンの肝細胞内におけるCa^<2+>関連情報伝達系における調節的役割とその機構について、特に、肝細胞膜のCa^<2+>ポンプであるCa^<2+>-ATPase.と細胞核への情報伝達機構としての核Ca^<2+>輸送系へのレギュカルチンによる調節的役割を究明した。 その結果、本年度において中心に実施した核Ca^<2+>輸送系へのレギュカルチンの作用については、まず、肝細胞核におけるCa^<2+>取り込みとその放出に対する細胞内因子であるアラチドン酸、NAD^+の作用を調べ、それらが細胞内で核Ca^<2+>取り込みを阻害し、また核からのCa^<2+>放出を促進することを明らかにした。核には、核Ca^<2+>取り込みに機能しているCa^<2+>-ATPaseが存在することを見出し、本酵素の活性は、アラチドン酸やNAD^+によって阻害され、そのことによって、核からのCa^<2+>放出がもたらされることを明らかにした。なお、他のホルモン関連細胞内メッセンジャーとして知られるサイクリックAMPやイノシトール3-リン酸などは核Ca^<2+>取り込みや放出に対して作用しなかった。レギュカルチンは、核Ca^<2+>-ATPaseの活性に対して作用せず、核Ca取り込みには関与しなかった。しかしながら、Ca^<2+>を結合することにより、核におけるCa^<2+>活性化DNA fragmenfafiorは明らかに抑制されたことから、レギュカルチンは核内に取り込まれて、核内のCa^<2+>に結合して核でのCa^<2+>作用を制御していることが推定された。
|