カルシウム(Ca)は、生体情報伝達因子としてのホルモンの作用を細胞内に伝え、細胞機能を調節する働きを有する。Ca^<2+>結合蛋白質レギュカルチンはその制御蛋白質であるとの知見が集積されつつある。本研究は、レギュカルチンの肝細胞内におけるCa^<2+>関連情報伝達系における調節的役割とその機構について、主として、肝細胞膜のCa^<2+>ポンプとして機能している。(Ca^<2+>-Mg^<2+>)-ATPaseと細胞核への情報伝達としての核Ca^<2+>輸送系へのレギュカルチンによる調節的役割を究明した。その結果、次の知見を得た。 1.ラット肝細胞膜の(Ca^<2+>-Mg^<2+>)-ATPase活性はレギュカルチンにより活性化される。この作用は、酸素リン酸化に影響することなく、酵素蛋白質のSH基に結合して活性化していることを明らかにした。 2.肝細胞膜の(Ca^<2+>-Mg^<2+>)-ATPase活性は、インスリン、エピネフリン、α_1-レセプターアゴニストにより上昇されるが、レギュカルチンはその効果を調節し、かえって抑えることが明らかにされた。レギュカルチンは生理的状態では肝細胞内Ca^<2+>の細胞外への汲み出しを促進しているが、ホルモン作用時には、ホルモン作用を制御することが判明した。 3.肝細胞核には、Ca^<2+>-ATPaseが存在し、核内Ca_<2+>取り込みに機能していることを見出した。アラキドン酸、NAD^+によって本酵素活性は低下するが、レギュカルチンは効果を有しなかった。一方、核からのCa^<2+>の放出はレギュカルチンによって促進された。 4.レギュカルチンは核におけるCa^<2+>によるDNA fragmentationの活性化を抑制するが、この作用は、核へのCa^<2+>取り込みに影響するのではなく、核内Ca^<2+>を結合し、一部核外へのCa^<2+>放出を促進して、Ca^<2+>による核機能を制御していることが推定された。
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