本研究は、自律神経組織と平滑筋・心筋の同時培養により神経筋接合部を再形成させ、シナプス伝達の機序を電気生理学的手法およびカルシウム(Ca)濃度変化測定の手法を用いて明らかにすることを目的とした。標本としては、交感神経系の上頸神経節と効果器の精管平滑筋・心筋を組み合わせて用いた。幼若ラット上頸神経節および心臓、成熟モルモット精管をコラゲナーゼなどの酵素で処理し、単一細胞と得た後、短期培養(1〜7日間)を行った。ラット培養心筋細胞は、1)培養時間とともに偏平化し、増殖した。2)個々の細胞が周期的な拍動をくり返し、集合体では同期した拍動が観察された。3)興奮性薬物投与による拍動数の増加が見られた。よって、培養心筋細胞においても、各種受容体は保持されていると思われる。一方、培養神経細胞では、1)神経突起の伸展がみられ、神経体の成長が見られた。2)神経突起の伸展に伴い、神経網が発達した。これらの特徴は過去の報告と一致しており神経ならびに心筋細胞の短期培養に成功したと考えられる。 また、培養心筋細胞内のCa濃度変化を測定するのに先立ち、モルモット単離心筋細胞にCa蛍光指示薬(Fluo-3AM)を取り込ませ、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞内Ca濃度変化を観察した。XY走査モードを用いて心筋細胞全体のCa濃度変化を観察したところ、通電刺激ならびに興奮性薬物投与により細胞内Ca濃度の上昇が見られた。しかし、細胞内Ca濃度上昇は、細胞の部分部分によって異なり、しかも興奮収縮時にはCaウエーブが発生することも知られているので、細胞全体での高い時間分解能での解析が更に必要であると思われる。なお、神経・効果器の同時培養は、現在もかなり成功率が低いため、成功率を高める方法を依然検討中である。
|