研究概要 |
インターロイキン1(IL-1)の増殖阻害作用に対し感受性のヒトメラノーマ細胞株A375-6と、長期培養により耐性を獲得した耐性クローンR8,R19を用いて耐性機構を調べた結果、以下のことが明らかになった。(a)、感受性株はIL-1を産生していないが、耐性株は微量のIL-1αを産生していた。それはmRNAでも確認された。(b)、耐性獲得はIL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1Ra)の産生によるものではなかった。(c)、IL-1レセプターmRNA量は、感受性、耐性両株で差がみられなかった。従って、レセプターが発現していない為に耐性になった可能性は否定できた。(d)、TNFに対する感受性は感受性・耐性株で変化がなかった。しかし、IL-6に対してはIL-1耐性株のみが耐性であった。(e)、耐性株は微量のIL-6を産生していた。(f)、IL-1Ra添加により、耐性株でのIL-6産生は抑制された。従って、耐性株の産生するIL-1がオートクライン機構によりIL-6産生を誘導していることが示された。(g)、外から添加したIL-1により、感受性、耐性株ともIL-6産生が増加した。従って、IL-1レセプターを介するIL-6産生のシグナル伝達系は耐性株でも正常に維持されていた。(h)、IL-6レセプターmRNAは、耐性株R19では発現量が極めて少なかった。一方、レセプターに結合しているgp130のmRNAはいずれの株でも同程度発現していた。従ってR19の耐性は、IL-6レセプターが少ない為である可能性が示された。(i)、活性酸素の消去に関与し、TNFに対する耐性の原因の一つであるMn-SODのmRNAについて調べたところ、耐性株では発現量が増加していた。しかし、その作用に活性酸素が関よしていると考えられている抗癌剤、マイトマイシンやアドリアマイシンに対する感受性は、感受性・耐性両株間で差はみられなかった。従って、活性酸素に対する感受性の差が耐性の原因とは考えられない。(j)、感受性株にIL-1α cDNAをトランスフェクトさせ耐性が獲得できるか否かについては、現在検討中である。
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