研究概要 |
平成4年度はインターロイキン6(IL‐6)のヒト関節滑膜細胞外マトリックス代謝におよぼす作用を解明する目的でヒト関節滑膜細胞を使用しマトリックス分解酵素であるマトリックスプロテアーゼ(MMPs)およびプラスミノーゲンアクチベーター,さらに細胞外マトリックス成分の生合成におよぼすIL-6の影響を検討し,以下の点を明かにした. 1.ヒト慢性関節リウマチ由来の線維芽細胞を使用した場合,IL-6はコラーゲンやプロテオグリカンなどの細胞外マトリックスの代謝には影響しない. 2.同細胞においてIL-6は炎症メディエーターであるプロスタグランジンE_2の生合成には影響しない. 3.IL-6は同細胞でのウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)産生を濃度依存的に促進した。 4.IL-6は単独ではMMPsインヒビターであるTIMP産生を促進し,一方MMPsの産生誘導活性を示さないことから抗炎症サイトカインと思われた.ところが,IL-6にはIL-1が誘導した組織コラゲナーゼ(MMP-1)やストロムライシン(MMP-3)産生の促進作用のあることが判明した. これらの結果から,IL-6は細胞外マトリックス成分やプロスタグランジンE_2の生合成には影響しないが細胞外マトリックス分解酵素の産生を特にIL-1との共存下において促進することを初めて確認した.したがって,慢性関節リウマチ等の病巣においてはIL-6は炎症悪化因子の一つと位置づけるられること,またIL-6を抗炎症サイトカインとする1部の研究者に警鐘を提言するとともに同内容を米国リウマチ学会誌(Arthritis Rheum.(1992)35(10):1197-1201)に発表した.
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