『慢性関節リウマチにおけるマトリックス分解酵素群の活性制御法に関する基礎研究』に関し平成4および5年度の2年度にわたり検討した。初年度では慢性関節リウマチにおいて増加することが報告されているサイトカインのうちインターロイキン1(IL-1)ならびに作用の不明であったIL-6の病態での作用を詳細に検討した。さらに平成5年度ではサイトカイン特にIL-1ならびにマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)産生に及ぼす非ステロイド性抗炎症薬の作用について検討し、以下の点を明らかにした。 すなわち、平成4年度でヒト関節滑膜細胞を使用しIL-6は細胞外マトリックス成分やプロスタグランジンE_2(PGE_2)生合成には影響しないがMMP産生を特にIL-1との共存下において著しく促進することを初めて確認した。したがって、慢性関節リウマチ等の病巣においてはIL-6は炎症悪化因子の一つと位置ずけられること、またIL-6を抗炎症性サイトカインとする1部の研究者に警鐘を提言するとともに同内容を米国リウマチ学会誌(Arthritis Rheum.(1992)35(10):1197-1201)に発表した。 平成5年度では慢性関節滑膜細胞においてPGE_1やPGE_2はIL-1が誘導したMMP産生に対し抑制作用を有する抗炎症物質であること、さらにIL-1により誘導されるMMP産生はインドメタシンなどのシクロオキシゲナーゼインヒビターの共存によりさらに増強されることを確認した。 以上の結果から、慢性関節リウマチにおいてはIL-6はIL-1共存下では炎症悪化因子であり、これまで炎症メディエーターとされたPGE_2に抗炎症作用のあることを明らかとし、これら疾患における抗炎症薬の第1選択に特別の注意が必要であることが強く示唆された。また、今後の抗リウマチ作用を主とした抗炎症薬はMMPやIL-1などのサイトカイン産生抑制作用あるいはサイトカインレセプター拮抗作用などを有するものが極めて有用であることが強く示唆された。
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