研究概要 |
GABA_A受容体機能をより明らかにする目的で、ムシモール、5α-pregnane-3α,21-diol-20-one(THDOC)およびペントバルビタールによるラット脳シナプトニューロソーム画分への^<36>Cl^-の取込み増加と、けいれんを起こさない用量のビククリンで、ラットを急性または亜急性処置したときの脳内各部位に特異的なクロライドイオンチャネルの変化を調べた。大脳・小脳・海馬においてムシモールによる用量依存的な^<36>Cl^-の取込み増加作用が認められ、この増加は単一な部位を介していた。大脳および海馬におけるムシモールの濃度依存曲線は、急勾配を示し最大130%の取り込み増加が認められた。ところが、小脳では勾配はなだらかで、最大反応も比較的低かった(-60%)。また、ムシモールの受容体に対する親和性も、これらの部位で違いが認められた。また、THDOCによる^<36>Cl^-の取込み増加は、大脳皮質と海馬では2相性を示したが、小脳では1相性であった。取込みの最大反応については、部位差は認められなかった。ペントバルビタールによる^<36>Cl^-の取込み増加作用は、ムシモールの場合と比べて顕著な部位差は認められなかったが、海馬における最大反応は、小脳と比較して有意に高かった。また、ビククリンの亜急性投与により、小脳でムシモールによる^<36>Cl^-の取込み増加が、コントロール群と比べて有意に高かったが、前頭皮質と海馬では変化は認められなかった。ムシモールの濃度依存曲線からビククリンの亜急性投与の効果を検討したところ、ムシモールに対するVmax値がコントロール群および急性投与群と比較して有意に増加していたが、K_D値には変化は認められなかった。これらの結果より、ムシモールによる^<36>Cl^-の取込みは脳内各部位で異なり、この部位差はTHDOCやペントバルビタールと比較して最も顕著であること、またビククリン亜急性投与で見られた小脳の受容体数の変化が、クロライドイオンチャネルの機能と関連していることが明らかとなった。
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