研究概要 |
ヒト胎盤より55,000倍精製したシアリダーゼはSDS-PAGE上78K,64K,46K,30K,20K蛋白から成るが、そのうち46K蛋白及び78K蛋白についてはシアリダーゼ活性とは異なった機能を持つ蛋白であることがcDNAクローニングによる解析から明らかにされた。ヒト胎盤より得られるシアリダーゼが他の組織のそれとは異なるのか否かを確かめる目的で、牛肝臓を用いヒト胎盤で行ったと同様の方法によりシアリダーゼの精製を行い、7,000倍の精製標品を得た。この精製標品はSDS-PAGE上65K,50K,30K,20Kの蛋白バンドを示し、ヒト胎盤の場合とは少し異なるものであった。また、基質特異性などの酵素学的諸性質は胎盤のそれとほぼ同じであったが、ヒト胎盤でみられた活性化現象は観察されなかった。(脂質生化学研究、33,119-122(1991)) ヒト胎盤シアリダーゼを抗原として、そのモノクローナル抗体の作製を現在行っているが、モノクローナル抗体の作製と平行してシアリダーゼ複合体に対するポリクローナル抗体の作製を行ったところ、シアリダーゼ活性を非常に良く沈降させる抗体が得られた。この抗体を用いて牛脳cDNAライブラリー(λgt11)をスクリーニングした。約10^8のファージから抗体に対する反応性が認められる6個のクローンを得た。現在、これらクローンについてその塩基配列等の解析を行っている。 一方、シアリダーゼ構成成分の活性本体を解明する目的でシアリダーゼに対する阻害剤の検索を行った。種々のシアル酸誘導体の中から、P-ニトロ及びP-アミノフェニルチオグリコシド誘導体に強い阻害活性を認め、その阻害様式は拮抗的阻害であった。(日本薬学会第113年会講演要旨3 P.54 (1993)) この阻害剤を用いてシアリダーゼの光アフィニティーラベル化を行うため、ラベル化合物の合成を試みている。
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