癌関連糖鎖抗原の一つであるTn抗原は、Tn症候群と呼ばれる血球系の疾患でも発現する。その中で、グリコホリンAにTn抗原が発現(TnグリコホリンA)することは、1950年代より明らかにされているが、そのエピトープは明確になっていない。我々は正常なグリコホリンAをシアリダーゼおよびβ-がラクトシダーゼ処理することにより、Tn抗原活性が出現することを確認した上で、エピトープの構造解析を試みた。すなわち、グリコホリンAをグリコプロテアーゼ処理することによって得た断片をDiol-60(YMC)のゲル3過、レンチルレクチンによるアフィニティークロマト、C18の逆相クロマトグラフィーにより精製した。グリコホリンAのN末端近傍にはGal NAc-Ser/Thrのクラスターが2ケ所(3ケと4ケ)が存在する。Tn抗原活性は、それぞれの糖ペプチドを固相化し、抗Tn抗体(MLS128)の結合で測定した。クラスターの存在する糖ペプチドはいずれも活性が見い出されたのに対し、Gal NAc-Ser/Thrが単独で存在する糖ペプチドには活性はなかった。また、3ケと4ケのクラスターをもつ糖ペプチドを比較した場合、活性発現には3ケで十分であることがわかった。 また、同抗原はT細胞系培養株の細胞のロイコシアリン(CD43)に多く発現されていることがわかった。Jurkat 細胞のロイコシアリンについてもエピトープの検討を行なった。すなわち、ロイコシアリンをトリプシン処理して得た糖ペプチドをMLS128の抗体カラムに通し分画した。抗原活性をもつ糖ペプチドを種々のクロマトグラフィーで精製し、アミノ酸配列を解析した。抗原活性をもつ糖ペプチドは、いずれもGal NAC-Thr/Serのクラスターをもつことがわかった。また、Ser、Thrの配列には抗原活性は無関係であることがわかった。
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