研究概要 |
二つの癌関連糖鎖抗原について検討した。ヒトT細胞培養系細胞SupTlに発現される異常糖鎖について調べた。HIV患者血清中にSupTlのロイコシアリンの糖鎖と反応する自然抗体が存在することが報告されており興味がもたれた。ムチン型糖鎖のコア部分を形成する糖転移酵素活性を測定したところN-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼやbeta1,3ガラクトシルトランスフェラーゼの活性は有意であり、少なくともT抗原(コア1)までの合成は可能であった。事実、抗T抗体を用いたFACSによる分析によりT抗原の発現が確認された。また、^3H-グルコサミンで代謝標識後lysateを調製し、免疫沈降を行った。SDS-PAGE後フルオログラフィーで同定したところ、ロイコシアリンに発現が認められた。また、同様に代謝標識したロイコシアリンよりオリゴ糖を切り出し、ゲル濾過で分画し、Gal-GalNAcOHの存在が確認された。従って、HIV感染したT細胞にT抗原が発現され、その異常糖鎖に対する自然抗体がつくられたものと考えられる。 次に、ヒト腸癌組織より糖脂質を調製し、シアリルLe^a抗原をもつ糖鎖について検討した。すなわち、ガングリオシド画分を調製後、グリコセラミダーゼ処理によりオリゴ糖を遊離させた。MSW113の抗体カラムを通し、シアリルLe^aを持つオリゴ糖を単離した。さらに、TSKNH_2-60により精製後,FAB-MAS及び^1H-NMRで構造を解析した。シアリルLe^a6糖の他にシアリルLe^aをもつオリゴ糖にさらにLe^x抗原を合わせ持つユニークな糖鎖抗原が発見された。
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