研究概要 |
生理活性ペプチドの経皮吸収を検討し以下の成果が得られた。 1.エルカトニン(ウナギカルシトニン)の経皮吸収とその治療効果 エルカトニンは,オクチルグルコシドまたはオクチルチオグルコシド(1.5%)と胆汁酸塩(1%)を共存させることによりラット皮膚から容易に吸収され,長時間の血清カルシウム低下作用を示すことを明らかにした。エルカトニンの経皮吸収剤の骨粗鬆症に対する治療効果を検討する目的で,実験的骨粗鬆症を惹起した雌性ラットに,吸収促進剤とタンパク分解酵素阻害剤を配合したエルカトニン経皮吸収剤の2日間適用を6回行った結果,プラセボ軟膏投与群に比較してラット頚骨重量の増加,頚骨中のカルシウム,リン量の有意な増加が,また血漿アルカリフォスファターゼ活性の減少が認められた。したがってエルカトニンは皮膚から吸収され,骨粗鬆症の治療に有効であると判断される(第8回日本DDS学会,発表,1992年7月,札幌)。エルカトニン経皮吸収剤の治療効果を増大させるため,活性ビタミンD_3を併用した結果,ビタミンD_3無添加に比較して頚骨中のカルシウム,リン量および頚骨重量の若干の増加が認められた。 2.エビラチドの経皮吸収 エビラチド(抗精神作用を有するペプチドで,痴呆症の治療薬として開発)の経皮吸収をヘアレスラットの皮膚を用い,in vitroで検討した。オクチルチオグルコシドにタウロコール酸ナトリウムを配合したゲル軟膏から^<125>1-エビラチドは最大の皮膚透過を示したが,これらの吸収促進剤を配合しない場合はほとんど吸収されなかった。 3.今後の計画 鎮痛ペプチドとして期待されるキョウトルフィン,エンケファリン,糖尿病に使用するインスリンの経皮吸収を検討し,ペプチドの経皮吸収剤の開発と疾病に対する効果を検討する。
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