研究概要 |
1.ヒト培養血管内皮細胞の機能発現に及ぼす細胞外基質の影響を検討した。フィブロネクチンやI型コラーゲン上では、内皮細胞は、0.5-1時間後には接着、伸展し、24時間後には高い接着率を示し、その後5日目まで直線的に増殖した。一方、V型コラーゲン上では、6時間まではI型コラーゲンと同様に接着、伸展するが、その後基質面から剥離し、細胞増殖は観察されない。この現象を解明するために細胞膜レセプター及び細胞内骨格タンパク質の役割を検討した。フィブロネクチンやI型コラーゲン上の内皮細胞では、0.5-1時間後に細胞周辺部と中心部にF-アクチン線維が形成され、接着斑の形成部位にはbeta1インテグリンが発現していた。3-6時間後には細胞周辺部のF-アクチン線維、接着斑、及びbeta1インテグリンは消失する。(細胞の中心部にのみ見られた)が、12-24時間後には再び細胞周辺部にも観察された。一方、V型コラーゲン上では、6時間までの現象はI型コラーゲン上と同様に観察されたが、9時間以後は細胞周辺部のみならず細胞中心部のF-アクチン線維及びbeta1インテグリンも消失していた。この様に、V型コラーゲン上からの内皮細胞の離脱は、細胞外基質-beta1インテグリン-細胞内骨格タンバク質系の再形成の失敗に起因している。 2.血管平滑筋細胞(SMC)の機能発現に及ぼす細胞膜レセプター及び細胞外基質の影響を調べた。血管中膜より酸素法で単離したSMCの表現型は収縮型(G0期)であり、フィブロネクチンやI型コラーゲン上で培養すると、I型コラーゲンとはalpha1beta1及びalpha3beta1インテグリンを介して、また、フィブロネクチンとはalpha5beta1インテグリンを介して結合して、中間型(G1A期)に移行した。この時始めて中間型SMCは増殖因子(PDGF及びIGF-I)に反応でき、合成型(G1B,S,G2+M期)に移行し、増殖を開始することができた。
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