研究概要 |
最終年度となる今年度は、前年度に開発したスリットレーザー照明蛍光生体顕微鏡を用い、家兎の骨格筋を対象として毛細血管透過性の計測および物質透過機序の解明を試みた。以下、得られた研究成果の概要を述べる。 1.毛細血管物質透過性の計測:分子量40,000〜150,000のFITC-dextranをテストトレーサとして用い、家兎tenuissimus muscle微小血管における透過性計測を行なった。微小血管の各部位(細動脈側・真性部・細静脈側)において、各トレーサの血管壁透過性を拡散成分(Pdif)と溶媒牽引成分(Vs)に分離して求めた結果、全てのトレーサにおいてPdif、Vsとも細静脈側で高い結果が得られた。また、PdifとVsを比較すると全てのトレーサでVsの方が高く示され、その比率は分子量が大きくなるほど上昇することが明らかになった。 2.巨大分子の血管壁透過機序の解明:1で定量的に得られたトレーサ分子量(分子径)と透過性の関係を基に巨大分子の透過経路と考えられる内皮細胞間隙の大きさを理論的に推定した。その結果、巨大分子がもっとも透過しやすい細静脈側毛細血管において235Aの水力学的半径を持つ間隙が存在するという結果が得られた。また、この間隙を通過する水分の濾過係数Lplは9x10^<-12>cm^3・s^<-1>・dyne^<-1>となり、小孔を通過するものも含めた水分の濾過係数Lpの約1/3となった。さらに血管壁に存在すると考えられる巨大分子の透過経路は、真性毛細血管部に比べ細静脈周辺部で約40〜60倍多く存在することが示唆された。
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