前年度から引き継がれた、ヤマトマダニ由来ボレリア株接種スナネズミ臓器の病理組織学的検索をおこなった。その結果、肉眼的に関節炎が観察されていた個体では病理学的にも炎症像が認められ、そうでない個体には炎症像は皆無であった。また、これまで観察から漏れていた皮膚炎が、一部の個体で観察された。関節炎、皮膚炎とも聖高原株接種群に頻発し、松本株接種群にはそれが殆ど全く生じなかった。かくて、当初のヤマトマダニ由来有毒株の地理的分布に偏りがあるとする想定が実証された。1995年6月6〜9日と10月26〜28日に美ケ原三城で小哺乳類を捕獲し、耳介、心臓、脾臓、膀胱を培養に付してボレリアの分離をおこなった。6月に65匹、10月に72匹を培養に供して多数のボレリア株を分離し、6月分については分離株のリボタイプを決定したっが、10月分については未だそれを終えていない。この段階で言えることは、北海道とは異なって、長野県ではボレリアの自然界における循環に中・大型動物が相当大きな役割を果たしている可能性が大きいということである。前2年度と同様に県下全域の臨床医にライム病とマダニ咬症に関する情報を提供し、症例の収集に努めた。その結果、マダニ咬症82例とライム病10症例を把握して考察を加え、来年度の情報としてまとめた。
|