ヒトの圧痛点を対象とし、圧痛部位の深部組織における痛覚閾値低下部位の分布パターンを明らかにし、圧痛点の発現に関連する基礎的データを集積した。 1.ヒトの大腿前面で触診による圧痛部位を検出した後、圧痛計(push-pullゲージ)を用いて痛覚閾値の測定を行なった。圧痛部位とその周囲、および反対側の対応部位と痛覚閾値を比較した結果、圧痛部位での顕著な痛覚閾値の低下が検出された。 2.圧痛点または対照部位に絶縁鍼灸針を刺入し、その深度を変えながらそれぞれの位置でパルス式痛覚計を用いて電流刺激を行い痛覚閾値を測定した結果、筋膜における閾値の低下が圧痛部位で顕著であった。 3.筋膜部位の同定の為に、通電刺激用の絶縁針を用いて筋電活動を導出したところ、筋膜通過直後にS/N比の大きなNMUが導出され、刺入時の抵抗感とともに刺激部位の同定に有用であることが明らかとなった。 4.ヒトに伸張性筋収縮負荷を繰り返して与えた後の遅発性筋痛を実験的に作成した。その筋痛の発現した筋を対象として痛覚閾値の変化を経時的に測定した結果、局在性のある持続的な深部痛覚閾値の低下が観察され、圧痛点モデルのひとつとして有用性が明らかとなった。 5.皮内または皮下にプロスタグランディンE2を微量注入して局所炎症を誘発させた時の皮膚・筋における痛覚閾値の変化を調べた結果、顕著な痛覚閾値の低下が得られた。 6.微小神経電図(Microneurography)法を用いて、ヒトの筋膜痛覚受容器からの活動電位の導出を試みているが、これまでところ電位の導出には成功していない。
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