1、動物実験 四塩化炭素急性肝障害ラットおよびアルコール慢性投与ラットを、10%のコーン油またはコーン油に10%のアラキドン酸エチルエステルを添加した飼料で2週間にわたって飼育し、肝障害時の脂質代謝の改善に及ぼす効果を観察した。その結果、アルコール投与ラットで認められた肝リン脂質のアラキドン酸組成比の低下が、10%アラキドン酸添加飼料群で改善された。またアルコール投与ラットでは肝6-ケトプロスタグランディンF_1αが低値を示したが、10%アラキドン酸添加で対照群の値まで上昇した。これらの結果から、アルコールによる肝障害の予防の値まで上昇した。これらの結果から、アルコールによる肝障害の予防にアラキドン酸補給が有用と推測された。 2、非代償性肝硬変例に対する高アラキドン酸油カプセルの負荷試験 多価不飽和脂肪酸不足のみられる非代償性肝硬変例にアラキドン酸、EPAとDHAの補給効果を検討するため、微生物が生成した高アラキドン酸油と魚油を混合した油脂カプセルを作製し、負荷試験を試みた。非代償性肝硬変3例を対象として、早期空復時にこのカプセル12粒(アラキドン酸 421mg、EPA 271mg、DHA 408mg含有)を負荷し、負荷後24時間にわたる血清脂質濃度と各脂質の脂肪酸組成比の推移を観察した。 高アラキドン酸油カプセルは、負荷24時間後に肝硬変例の血清リン脂質のアラキドン酸比を高めるとともにリン脂質濃度を上昇させ、脂質代謝障害を改善するものと期待された。今後は、この油脂カプセルの長期投与の効果を検討する予定である。
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