研究概要 |
われわれは、遺伝性非球状性溶血性貧血の原因となる赤血球酵素異常症の中でも比較的頻度の高い、ピリミジン5'-ヌクレオチダーゼ(P5N)異常症の分子レベルでの病因解明を最終目標に、ヒト赤血球に存在する2つのP5Nアイソザイムの構造解析を進めている。今年度は、未だ完全精製されていないP5N-2の精製を試みた。スタンダードなクロマトグラフィーを中心とする方法で、2,000mlの赤血球よりP5N-2は約134,000倍に精製され、90mugの精製酵素が得られた。精製標品はSDS電気泳動にてほぼ均一で、U3'MPを基質とした比活性は44、130mU/mgであった。精製酵素を用いたキネティクスでは、従来、報告されている部分精製試料を用いた成績と大きな差はなかったが、本アイソザイムが、糖リン酸エステルおよびその誘導体の中で、例外的に、6-ホスホグルコン酸(6PG)を基質として利用することが明らかになった。その生理的意義については今後は研究を待たなければならないが、本アイソザイムの機能を解明する上で重要な所見と考えられる。精製酵素タンパクをPVDF膜に転写しさらに精製したのち、構造解析の第1歩としては、アミノ酸組成分析、およびN末端アミノ酸配列の解析を行なった。本酵素のN末端はブロックされており現在、脱ブロックしての解析に必要な精製標品を大量精製中である。本アイソザイムの部分アミノ酸配列に基づいてオリゴヌクレオチドプローブを作製し、すでに作製済みのヒト網赤血球cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、本酵素cDNAのクローニングを行なう予定である。
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