雄性高ビリルビン尿症ラット(EHBR)においては、5週令から薬物代謝能の変動が認められ、加令に伴いその変動は顕著になった。このことから、性成熟に伴う変動要因が考えられた。10週令のラットを用い、血中性ホルモンレヴェルを調べたところ、雄においてはテストステロン濃度が、オリジンであるSD系ラットの約30%と有意に低い値を示した。一方、血中エストラジオール濃度は、テストステロンとは逆に高値を示す傾向が認められた。これらの結果から、雄性EHBRの血中性ホルモンレヴェルは雌に近いことが推察された。そこで、雄性EHBRにおける性ホルモンのP450分子種に対する作用について、性腺摘出ラットならびに性腺摘出後テストステロン投与したラットを用い、P450分子種を定量し、SDラットの場合と比較した。無処理ラットでの比較検討結果より、EHBRは先に報告している3A2含量ばかりでなく、2C11含量もまたSDラットに比較し低いことが明らかとなった。一方、1A2および2A1については、先の2種のP450とは異なりEHBRの方がSDラットより含量が高い傾向を示した。これらのP450分子種は性腺摘出により、2C11、3A2含量はEHBR、SDラット共に有意に低下したが、EHBRでの3A2含量の低下はSDラットのそれと比較し小さいものであった。1A2および2A1含量は、性腺摘出により共に上昇傾向を示した。SDラットでは、性腺摘出により低下した2C11、3A2含量はテストステロンを投与することにより回復したが、EHBRではテストステロン投与による両P450分子種の上昇は僅かであるか殆ど認められなかった。以上の結果から、EHBRにおけるP450分子種の変動要因は性ホルモン以外についても考えられ、現在それらの要因について検討を続行中である。
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