研究概要 |
モルヒネ慢性投与により変化するマウス脳のDNA結合蛋白質(sCRE-BP)の精製及びアミノ酸、DNAのシークエンスを検討した。一本鎖CRE結合蛋白質はマウス小脳の核抽出画分を超遠心(100,000xg、1h)後、上清をアミコン限外ろ過装置(YM100)を用いて濃縮し、1本鎖CREのDNAアフィニティカラムとMonoQカラムを用いて精製した。MonoQカラムからの約0.4MKCl溶出分画にsCRE-BPの結合活性が存在し、約13000倍精製した。SDS-PAGE上で、分子サイズが35-40kDaの二本のポリペプチドバンドを検出した。sCRE-BPはラットの43kDa-CREBやCRE-BP1に対する抗体とは反応せず、1本鎖DNAに特異的に結合することから、これまでに報告されたCRE結合蛋白質とは異なると考えられる。精製分画を2Murea存在下、30℃で、48時間、リシルエンドペプチダーゼによって分解し、逆相HPLCにて分離した。自動エドマン分解装置を用いて、ペプチドのアミノ酸シークエンスを決定した。次に、このアミノ酸配列をもとにDNAプライマーを合成し、PCRを行った。得られたPCR産物をプローブとして、マウス脳のlgt10cDNAライブラリーを用いて、クローニングを行った。次に、得られたクローンのシークエンスをDNAシークエンサー373A(ABI)のシステムを使用して行った。決定することのできたアミノ酸配列に関して既知の蛋白質とのホモロジーを検索したが、顕著なホモロジーは見いだされなかった。この蛋白質の機能はまだ不明であるが、モルヒネ長期投与により、DNA結合活性が変化することから、モルヒネの耐性依存現象に深く関与していると考えられる。
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