1.下垂体前葉CRF受容体、アデニレート・シクラーゼ活性に対する性ホルモンの作用:ラット、マウス大脳皮質膜標品及びラット下垂体前葉ホモジネートのアデニレート・シクラーゼはCRFにより活性化されるが、この活性化作用に関して性差は見られなかった。又、8-OH-DPATの慢性投与はラット下垂体前葉CRF依存性のアデニレート・シクラーゼ活性に影響を及ぼさなかった。CRF依存性アデニレート・シクラーゼ活性に変化がなかったので、当初計画していたCRF受容体結合実験は行わなかった。これらの成績は8-OH-DPATで見られた視床下部・下垂体・副腎系(HPA)活性化の性差の原因がCRF依存性アデニレート・シクラーゼの系にないことを示唆する。 2.脳各部位のCRF依存性反応の検討:CRF依存性アデニレート・シクラーゼは下垂体だけでなく脳各部位に不均一に存在しており、またシナプトゾームの系でCRF受容体を介したチロシン水酸化酵素活性の増加が報告されている。しかしながら、これらアデニレート・シクラーゼ活性は雌雄で同様な活性値を示した。また、シナプトゾームにおいてチロシン水酸化酵素がCRFにより活性化されるとの報告がなされていたが、我々の検討ではその活性化は軽度であり、この点を追求することは困難であった。 3.8-OH-DPAT投与によるHPA活性化及び体温下降作用の耐性発現の性差:8-OH-DPATの作用に耐性が見られることが、又5-HT作用薬の臨床効果発現に慢性投与が重要であること等が報告されている。これらの知見をもとに、8-OH-DPATの薬理作用の耐性発現を雌雄マウスで検討し、血中コルチコステロン増加作用、体温下降作用の耐性が雄性マウスより雌性マウスにおいて早く発現することを見いだした。この成績は、5-HT作用薬の臨床効果が性ホルモンにより影響を受ける可能性を示しており注目される。
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