研究概要 |
従来、循環器系疾患治療に用いられてきた幾種かのCa拮抗薬には中枢薬理.効果を有するものがあることは、我々の総説においても紹介した(日薬理誌,100;239-247,1992)。しかしながら、中枢作用機序に関する報告は一定の見解が得られておらず、末梢組織での作用機序と同一に考察することは困難と思われる。一方、最近の研究から中枢神経組織に存在するCa^<2+>channelの性質について幾種かのサブタイプが証明され、生理学的機能や局在が次第に明らかにされつつあることから、Ca拮抗薬の中枢作用機序の解明が可能になってきた。さらに、Ca^<2+>channelは神経細胞のみならずグリア細胞にも存在し神経-グリア細胞間相互作用に重要な役割を有することも示唆されるようになった。本研究の初年度は、Ca拮抗薬の中枢作用機序を神経-グリア細胞間相互作用を加味し考察するため、培養脳神経細胞の神経細胞とグリア細胞の存在比の数量化を可能とする定量法を確立しCa拮抗薬のGlu放出への阻害効果を検索した。培養小脳顆粒細胞を作製しAraCの添加あるいは無添加によりグリア細胞数の増減を調節した。グリア細胞は1次抗体であるGFAPで反応させた後、2次抗体であるFITCを反応させた免疫蛍光を用いて自動細胞スクリーナーによりグリア細胞数を定量した。培養日数3,7,10および14日間の細胞総数はそれぞれAraC添加群では、1.3±0.1,1.4±0.1,1.5±0.1,1.7±0.2(x10^6cells/ml)であり、Arac未添加群では1.3±0.1,2.1±0.1,2.3±0.2,2.5±0.3(x10^6cells/ml)であった。一方、各培養日におけるグリア細胞数は細胞総数の比率から求めると、AraC添加群では8.4±0.8,11.8±0.9,17.3±2.5,21.6±2.0(%)であり、AraC未添加群では8.9±0.8,27.6±1.2,32.3±1.6,41.7±2.7(%)であった。両群いずれも培養日に従いグリア細胞数の増量が認められたが、7日目以降の神経細胞数は両群共ほぼ同数であった。以上の成績を加味し Ca拮抗薬のGlu放出に対する阻害効果を検索したところ7および10日目の培養細胞では、グリア細胞の豊富な群で薬理効果の増強が認められた。現在、この点を中心にして作用機序を検索している。
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