研究課題/領域番号 |
04671424
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研究機関 | (財)東京都臨床医学総合研究所 |
研究代表者 |
羽里 忠彦 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 化学療法研究部門, 研究員 (60109949)
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研究分担者 |
茅 稽二 順天堂大学, 医学部・麻酔科, 教授 (20124969)
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キーワード | Spinorphin / 脊髄 / Enkephalin分解酵素阻害物質 / オピオイド / Enkephalinase |
研究概要 |
がん末期における痛みの治療に使用されているモルヒネの受容体が脳に存在していることが明らかにされて以来、内因性モルヒネ物質としてEnkephalinが脳より発見され副作用のない鎮痛薬として期待されてきた。我々はEnkephalinが中枢系の痛みに如何なる役割を果たしているか研究していく過程で、ヒト脳脊髄液中に内因性Enkephalinを調節する低分子の因子が存在していることを見出した。Enkephalin調節する因子の構造を解明するために、それぞれのEnkephalin分解酵素の阻害活性を指標として探索し、脊髄よりSpinorphin(スパイノルフイ)を単離・精製し、合成することに成功した。SpinorphinはそれぞれのEnkephalin分解酵素を強く阻害し、水、有機溶媒に可溶の特性を有している最強のEnkephalin分解酵素阻害物質である。本物質は単独で摘出平滑筋標本を用いた電気刺激収縮を濃度依存的に収縮抑制効果し、脳室内投与により薬理試験でモルヒネと同様のオピオイド活性を発現することを明らかにしている。本年度、オピオイド活性があるSpinorphinが免疫機構に重要な働きをしている好中球表層のCD10(Neutral endopeptidase、別名NEP)にどのような影響があるかを検討した。基質Suc-Ala-Ala-Phe-AMCを用いて、好中球のNEP活性を15分間反応する系に入れると、SpinorphinはIC_<50>0.2nMと強力な阻害活性を示した。中枢系の脳、脊髄に存在しているNEP(Enkephalinase)の効果と比較して100倍以上の阻害活性を示した。最強のEnkephalinase阻害物質・Spinorphinが脊髄に高濃度存在していることは複雑な痛みの制御機構を解き明かす強力な武器になるだろう。
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