研究成果は次のようにまとめることができる。 1)ヒトMCAF遺伝子をマウス骨髄腫細胞に導入し、恒常的に高濃度のヒトMCAFを産生する細胞株を樹立した。この細胞培養上清より精製純品を得、これがマウスの緑膿菌・チフス菌の致死的感染を顆粒球芽$減少している状況でも予防することを認めた。 2)ヒトMCAFに対する100pg/mlから10ng/mlの範囲で測定可能である酵素免疫測定法を確立した。この測定系を用いて、免疫賦活剤であるOK-432を癌性胸膜炎患者胸腔内に投与時に胸腔内MCAF濃度が上昇すること、ヒト・グリオブラストーマ細胞株がMCAF産生能があることを認めた。現在、この測定系を用いて、臨床材料について検討を加えている。 3)MCAFの近縁分子の一つであるインターロイキン8(IL-8)の種々の炎症反応における役割を、抗体投与によって検討した。その結果、LPS投与による急性皮膚炎・肺再灌流障害に認められる、好中球を主体とする白血球侵潤とそれに伴う組織障害に、局所で産生されているIL-8が原因物質として深く関与していることを明らかにした。 4)ヒトIL-8に対する酵素免疫学的測定法を用いて、尿路感染症患者尿中でIL-8濃度が特異的に上昇することを認めた。さらに、腎組織に白血球侵潤が認められるループス腎炎・急性糸球体腎炎・急性増悪時のIgA腎症などにおいて、尿中IL-8濃度が有意に上昇していることを認めた。これらの結果は、尿中IL-8濃度の測定が、尿路疾患の新たな有用な診断法になりうる可能性を示していると考えられる。 以上の研究と並行して、IL-8遺伝子発現調節機構の分子生物学的解析を行った。その結果、IL-8遺伝子上流域に存在するNF-kB領域が、IL-8遺伝子発現に重要であることを確認した。
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