プロテインCは肝臓で産生されるビタミンK依存性セリンプロテアーゼ前駆体の一つで、生理的に最も重要な血液凝固制御因子である。凝固機転により生成したトロンビンは血管内壁上のトロンビンレセプターのトロンボモジュリンに結合し、迅速かつ特異的にプロテインCを活性化する。活性化プロテインCは凝固第Va因子および第VIII因子を分解し、失活化させる。従って、プロテインCは血管内凝固制御に不可欠であり、その先天性欠乏症患者は、多くはヘテロ接合体にもかかわらず青年期から重篤な静脈の血栓や塞栓症を反復する。また、希にみられるホモ接合体では出生直後から重篤な血栓や塞栓症で致死的な電撃性紫班病を発症する。我々は電撃性紫班病を発症した先天性プロテインC欠乏患者を見いだし、その活性値(5%未満)と抗原量(20%)からホモ接合体と診断した。また家族検査により、母親はプロテインC欠乏症のヘテロ接合体、父親はプロテインC分子異常症のヘテロ接合体であり、患児はプロテインC欠乏症と分子異常症の異なった2種類の原因遺伝子からなるホモ接合体であることが判明した。 患児のプロテインC遺伝子のDNA塩基配列を解析した組果、半分の遺伝子のエクソン3にGlu26(GAG)→Lys(AAG)置換(変異1)が認められた。また半分の遺伝子のエクソン9にGly381(GGT)でG-塩基の欠失(変異2)が認められた。得られた遺伝情報に基ずき家族のDNAを検索したところ、変異1は父親由来、変異2は母親由来であることが判明した。現在この患児の両親は、正常な第2子を望んでいるため、迅速な出生前診断法確立のため種々の検討を行っている。
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