研究概要 |
本研究は巨核球・血小板系の分化・成熟過程を分子生物学的に検索し白血病化巨核球ないし前駆細胞の分子生物学的特徴を明らかにして、白血病化細胞における増殖能と分化能との関係および良性増殖性巨核球と腫瘍性増殖能との鑑別について確証を得ることを目的としている。今年度の研究で得られた成果の主なものは次の通りである。(1)巨核球関連細胞株を用いて、巨核球表面糖蛋白GP Ib,IIb,IIIa及び個有蛋白platelet factor4(PF4)、およびIL-6及びIL-6受容体のcDNAを用いてin situ hybridization法(ABC法による発色)を行いNothern blot法と比較した。K562細胞ではGP IIIa mRNA,CMK細胞ではGP Ib,IIb,IIIaそれぞれのmRNA,HEL細胞ではこれら凡てのGPs遺伝子とPF4 mRNAが検出され、標本上で個々の細胞のmRNA発現度を比較でき、実用上有用であった。またこれら巨核球系細胞ではIL-6及びIL-6受容体mRNAの発現がみられ、巨核球はIL-6のオートクライン機構で分化している可能性が示された。(2)巨核球前駆細胞が分化段階に応じて異なったサイトカインに反応する機構を解明するために、CMK細胞を用いてGM-CSF受容体β鎖及びIL-6受容体遺伝子の動きを観察した。CMK細胞はTPA又はIL-6で成熟するが、GM-CSF受容体β鎖mRNAは当初減量したのち徐々に増加し、IL-6受容体mRNAは経時的に増量した。この事からGM-CSF受容体β鎖を共有するGM-CSFとIL-3は巨核球前駆細胞の早期の分化・増殖に、IL-6はより後期の分化・成熟に関与することが知られた。(3)巨核球関連細胞株のうち、K562細胞,CMK細胞HEL細胞ではGPIbα,IIb,IIIa mRNAの発現がみられたが、PF4 mRNAはより分化・成熟したHEL細胞だけに発現していた。このことからPF4 mRNAの検索は巨核球系細胞の成熟度ないし腫瘍化度の判定に有用な指標と考えられ、引続き研究を続行している。
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