研究概要 |
細胞活性化と深い関係のある細胞内pH(pHi)を、フローサイトメトリーやレーザー走査型顕微鏡を用いて個々の細胞レベルで測定する方法を確立し、種々の生理機能や病態の解析に応用するのが本研究の目的である。今年度の研究経過を、今後の計画を多少含めて以下箇条書きにして記載する。 1.健常人末梢血を用いた基礎的条件の設定 健常人末梢血より比重遠心法によってリンパ球を分離してpHiを測定する方法に加えて、白血球の全分画(好中球・単球・リンパ球)のpHiを同時に測定する方法について検討した。細胞表面マーカーの検索に通常用いられる溶血法を行うと、その操作によってpHiが変動することが判明したため、低速度で遠心後30分間静置する方法が最も簡便で実用的であることが判った。今後、健常人末梢血白血球pHiの基準値を設定する予定である。 2.細胞表面抗原とpHiの二重染色の検討 pH指示薬bis-carboxyethyl carboxyfluorescein(BCECF)によるpHiと、phycoerythrin(PE)を標識した細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体による二重染色を用いて、細胞サブセット毎のpHiの測定が可能となった。ただBCECFの蛍光とPEの蛍光の分離が今一つ不十分であり、今後その点の改善策として、PE以外の蛍光色素も検討する予定である。 3.レーザー走査型顕微鏡(LSM)によるpHi変化局在の検討 LSMによる検討により,細胞内のpHの局在がある程度判明したが、今年度はデータの集積が不十分であった。その原因の一つに機種が旧式であったための解像力の悪さがあげられる。機種も更新となったので、今後はより充実した検討が可能と考えられる。
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