研究概要 |
【目的】 人工関節全置換術は高度に関節に変形をきたした患者に、無痛性と可動性が獲得できる手術である。しかし、人工の関節ゆえ長期に使用するには、股関節にかかる負担を少なくするような日常生活の過し方などの退院指導や継続看護が重要である。 そこで、本研究は人工股関節全置換患者の患者教育に有効な手段を明らかにするために、術後1年間患者の術後の回復過程についてprospectiveに検討し、回復に関わる要因や術後の生活の満足度についても検討することを目的に平成4年度と5年度の2年間にわたるものである。 【対象および方法】 本年度は金沢大学医学部附属病院で人工股関節全置換術を受け、退院後の経過を追跡することのできた患者28名(男性5名、女性23名)を対象とした。平均年齢は53.03±6.5歳である。方法は、大学病院退院時および退院後2〜3ヵ月毎に現在のADLの状況、日常生活の過し方、1本杖使用の有無、体重の変化等について、外来での面接または一部郵送により調査を行った。ADL項目は、日本整形外科学会変形性股関節症判定基準の日常生活動作をもとに、経験的に日常使われる動作を加えた11項目である。ADLの評価は自立3点、部分介助2点、全介助(不能を含む)1点とした。生活の満足度はSelman,S.W.のModified Artherites Impact Measurement Scaleを使用し,手術後半年を経過した患者に術前との活動性や社会性,自己概念,役割機能について郵送で調査した。 【結果の概要】 (1)対象の疾患では、変形性股関節症が22名(79%)と最も多く、次いで大腿骨頭壊死4名の順であり、平均罹病期間は6.9±7.0年であった。 (2)ADL11項目の回復状況を退院時、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月に検討した結果、術後3ヵ月の時点での回復状況の変化が、その後の経過に有用であると示唆された。 (3)半年後の生活の満足度の得点では、手術前に比べて痛みや家事などは高値を示したが、交遊関係などの社会的活動は低値であった。
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