研究概要 |
糖尿病性細小血管症、動脈硬化症の発症機序の詳細については未だ解明されていない。血管は血管内皮細胞、基底膜、支持細胞などよりなるが、内皮細胞自身の機能が糖尿病により変化を被ることが、その発症機序の原因と考えられている。また糖尿病合併症の成因にPolyol代謝ならびMyo-inositol(MI)代謝の重要性が指摘されている。即ち、糖尿病状態ではSorbitol蓄積やMIが減少することにより、イノシトールリン脂質の代謝回転が円滑に働かず、細胞内情報の伝達に支障をきたして、種々の生理作用に障害が生じることが推定される。そこで糖尿病性血管障害の成因、進展防止を明らかにする目的で高濃度グルコース(G)による血管内皮細胞のミオイノシトール(MI)代謝の影響とアルドース還元酵素阻害剤(ARI)、イコサペント酸(EPA)の効果を検討した。方法:MCDB107培地で培養したヒト臍帯血管内皮細胞を用いた。結果:1)血管内皮細胞(HUE)細胞にAldose reductase(A.R.),Sorbitol dehydrogenase(S.D.H.)活性を確認した。2)HUE細胞の取り込みはNa依存性MI取り込み機構の存在が確認された。Ouabain添加時には、2.5mM以上でMI取り込みの有意な抑制がみられた。一方、インスリン(10^<-6>M)は何ら影響を及ぼさなかった。Gは25.5mMの濃度でNI取り込みを薬25%抑制し、かつ濃度依存性の抑制効果を示した。次いで、アルドース還元酵素阻害剤(ONO2235)、EPAのMI取り込みに対する効果を検討したが、G濃度 55mMにおいて ONO2235、EPAの添加にてMIの取り込みの有意な改善がみられた。3)HUE細胞のPDGF産生量は培養液中のGlucose(G)濃度依存性に有意(p<0.05)な増加を示し(5.5mM 25.2(Fmol/24hrs/dish),13.8mM 40.0,27.5mM 45.8)。高浸透圧対照では、25.9と対照との差を認めなかった。また、phorbol ester添加群では、40.9(p<0.05)と有意に増加した。Northern Analysisでは対照(5.5mM)に対し、高G群、phobol ester添加群では発表量は増加することが判明した。
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