本研究で分析の対象としている全身性カルニチン欠乏マウス(JVSマウス)は、常染色体・劣性の遺伝形式をとり高脂血症、脂肪肝、高アンモニア血症、低血糖症などを呈する。これら症状とカルニチンとの関係が明らかになると、ヒトの脂質・糖質代謝におけるカルニチンの役割を考えるうえで重要な手がかりとなる。 JVSマウスにおいては高アンモニア血症を併っており、肝のcart-amylphosphute synthase(CPS)、ornithine tsanscasbamylase(OTC)活性が低下している。そこで次に生後10日目より1mgのL-カルニチンを28日目まで腹腔内投与し、29日目に検討すると次のことが明らかになった。1).末治療JVSマウスでは上記酵素以外にもarg-ininasuccinate synthase(ASS)活性も低下していた。2).治療前JVSマウスのCPSmRNA、ASSmRNAは低下していた。3).治療後15日目、19日目に分析すると末治療のJVSマウスでは上記 mRNAは低値を持続した。しかし、治療した場合は対照(脂肪肝を示さないマウス)にまで上昇した。 JVSマウスでの組織学的分析により、次のことが明らかになった。1).肝では細胞内に脂肪滴が増加し、ミトコンドリア(Mie)に多形性およびクリステの増数を認めた。2).骨格筋では、特に赤筋線維においてMitの増大・腫大がみられた。3).心臓ではMitの増加、変性像がみられた。骨格筋、心臓では軽度の脂肪滴が増加していた。 次に体重1g当り0.13mgのLーカルニチンを生後10日目より18日目まで腹腔内注射(1日1回あるいは2回)し、組織の総脂質、中性脂肪を分析すると、肝に対しては激的に効果がみられたが、骨格筋・心筋では著明な変化は見られなかった。
|