研究概要 |
全身性カルニチン欠之マウスを用いた分析により,次のことが判明した。 1.全身性カルニチン欠之症の発症のメカニズム 本マウスでは,血液,骨格筋,心筋,肝のカルニチン含量が対照に比し約20%に低下し,腎排泄量が正常に保たれている特徴を持っていた。腎臓スライスにおけるカルニチン輸送活性の測定を行ったところ,ナトリウム依存性のカルニチン輸送活性が,本マウスでは著しく低下していた。またスキャチヤード解析より,本マウスでは高親和性(Km=50μM)の輸送活性が欠損していることが示された。 2.脂肪肝の分析 脂肪肝は生後3日目よりすでに肉眼で認めることのできる変化である。この脂肪肝の組織学的分析・脂肪組成と,カルニチン欠乏との因果関係を分析し,次のことが明らかとなった。生後2週の肝のHE染色では本マウスにおいては肝の細胞は腫大し大小さまざまな空胞が多数見られた。核はコントロールに比し大きいものが多数見られた。4週目の肝も同様の所見であった。生後71日目の本マウスにおいては対照に比し総脂質量は約7倍,中性脂肪は約25倍に増加していた。次にL-カルニチンを0.13mg/g体重を毎日1回あるいは2回腹腔内投与し20日目に分析すると総脂質量は1回投与では約40%,2回投与では60%減少していた。脂肪組成ではトリアシルグリセロールは著明に低下しており,総脂質量の低下はトリアシルグリセロールの減少によるものと思われた。
|