研究概要 |
骨髄細胞の象牙質上での吸収窩形成能を骨吸収活性の指標として、副甲状腺ホルモン(PTH)の2岐の骨芽細胞内情報伝達系〔cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)とカルシウム/プロテインキナーゼC(Ca/PKC)〕の骨吸収促進作用における役割を検討し、PTHの骨吸収作用に直接PKAが関与し、またCa/PKC系も補佐的役割を有することを明らかにした。またPTHは骨芽細胞からの液性因子を介して及び破骨細胞の前駆体に直接作用することにより破骨細胞形成を促進するが、これらにもPKA及びPKC活性化が直接関与することを証明した。カルチトニンが骨芽細胞に直接作用し、増殖,アルカリフォスファターゼ,タイプエコラーゲンmRNA及びオステオカルシンmRNAを促進すること、さらにC-tos geneの発現を誘導することを見出した。人由来の単球培養上清が骨芽細胞増殖を促進し、一方活性型ビタミンD及びPTHにより誘導される破骨細胞形成を抑制する結果を得た。また活性型ビタミンD,レチノイン酸,エストロゲン及びデキサメサゾンで単球を処理することにより、培養上清の骨芽細胞への作用が変化する現象を見出した。さらには骨の徴少環境での重要な局所因子と考えられているサイトカインや成長因子が骨芽細胞のみならず単球の化学走化性を誘導することも見出した。以上は骨における細胞間連鎖機構に、吸収窩に出現する単球が重要な役割を果たしていること及び上記のカルシウム調節ホルモンは骨芽細胞に対し、直接作用のみならず単球を介する間接作用を有することを示している。さらに骨吸収窩の微少環境下でおこる変化(カルシウム,リン濃度上昇等)が直接及び単球を介して骨芽細胞機能に影響を与えること、さらに上記の変化が骨芽細胞及び単球の化学走化性を惹起するデータも得ており、吸収窩の微少環境の変化自体が骨吸収から骨形成へのカップリングに重要な役割を果たしていると考えられる。
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