本研究により骨吸収から骨形成への転換期に吸収窩に出現する単球と骨吸収時微小環境下でのカルシウム濃度上昇が骨における細胞間情報伝達に重要な役割を果たすことを明らかにした。即ち骨吸収窩に単球、続いて骨芽細胞が出現する現象を説明する上で、吸収窩でのCa濃度上昇が重要な役割を果たすこと及びこのCa濃度上昇が直接的にはIGF-1のオートクリン機構により、また間接的には単球由来の局所因子を介し骨芽細胞増殖を含む機能に促進的作用を及ぼすことが示された。一方Ca濃度上昇や単球の存在が破骨細胞形成能を抑制することにより、骨吸収にnegative feedbackを惹起する機序の存在を示した。カルチトニンが破骨細胞のみならず骨芽細胞にも直接作用を有し、IGF-1、1型コラーゲン、オステオカルシンのmRNA発現を促進し、骨形成に促進的にすることを明らかにした。副甲状腺ホルモン(PTH)の骨吸収促進作用にcAMP-dependent protein Kinase(PKA)が直接関与することを明らかにした。またPTHの破骨細胞分化促進作用には破骨細胞の前駆細胞に直接作用する系と骨芽細胞よりの液性因子が関与する系が存在し、両系共にPTH反応性の2岐の情報伝達機構(PKAとcalcium/プロテインキナーゼC)が直接関与することを明らかにした。筋肉、脂肪、軟骨そして骨芽細胞への分化能を有する未分化線維芽細胞株C3H10T1/2細胞においてはBone morphogenetic protein-2(BMP-2)が骨芽細胞への分化を誘導し、一方筋肉細胞への分化を阻害することが証明されており、骨芽細胞分化機構を研究する糸口となっている。私共はこの細胞と骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1細胞を用いて、BMP-2やノイン酸が新たな核タンパクや遺伝子を誘導することをそれぞれ2次元電気泳動とSubtraction法により見出しており、現在その分離、同定を進めている。
|