研究概要 |
細胞外基質はIV型コラーゲンを初めとするコラーゲン,ラミニン,プロテオグリカン等より構成されていることが明かにされてきた。糖尿病性腎症においてはIV型コラーゲンの質的及び量的異常とプロテオグリカンの減少が推測されている。これは,糖尿病腎糸球体細胞の形質変化によるものと考えられている。まずネフローゼ症侯群を呈する糖尿病性腎症患者腎組織の免疫電顕による検討ではIV型コラーゲンの密度の低下と基低膜肥厚による量の増加とヘパラン硫酸プロテオグリカンの減少が認められた。これらの変化は糸球体基低膜のsize barrierとcharge barrierの障害を反映しており蛋白尿の成因と考えられていた。次にIV型コラーゲンの異常を更に検討するために,我々はIV型コラーゲンの新しい鎖,α4鎖のcDNAのクローニングを行い,NC-1domainを含む1.9kbのcDNA(NK4)を得,ノーザンブロットによる検討ではα4鎖mRNAのサイズは約9.5kbとα1,α2と比して大きかった。糸球体におけるIV型コラーゲンα1-α4鎖とbasement membrane associated‐collagen(BAC)の局在の蛍光抗体による検討ではα1・α2鎖は糸球体メサンギウムから糸球体係蹄壁に局在した。α3・α4鎖は主に糸球体係蹄壁に局在した。BACはメサンギウム基質に限局していた。糖尿病性腎症患者の腎生検切片による検討では拡大したメサンギウム基質及び肥厚した糸球体基低膜におけるこれらα1-α4鎖とBACの染色は増強していた。糖尿病性腎症における間質型・線維型コラーゲンの関与を検討するために,III・V・VI型コラーゲンの局在を検討した。III型コラーゲンは正常では間質のみに存在し,V・VI型コラーゲンはメサンギウムにも局在した。糖尿病性腎症においては、これらのコラーゲンはメサンギウムに著明に増加していた。これら間質・線維型コラーゲンも糖尿病性腎糸球体硬化症の進展に関与していると考えられた。
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