研究概要 |
(1) 肝におけるSU剤特異結合部位の同定: 3H-glibenclamideのラット肝粗細胞膜への結合は、温度、時間依存性であり可逆性であった。結合は各種SU剤によって阻害され、阻害の強さは各SUの臨床的な血糖降下作用の強さに比例しており、糖代謝に関連した何らかの作用を担っていることが想定された。Replacement Studyによって得られたKd値は、Tolbutamide 0.6mM,Acetohexamide 0.33mM,Gliclazide 74μM,Glimepiride 4.2μM,Glibenclamide1.8μMであり、B細胞や脳で報告されている値よりかなり高く,脂肪細胞で報告されている値に近似していた。部分精製したラット肝細胞膜においても同様の結合がみられ,結合部位は細胞膜にあると想定された。 (2) 非SU系薬剤CS-045による肝Fructose‐2.6‐Bisphosphate(F‐2.6‐P_2)の増加作用についての検討: CS-045は内因性インスリン分泌を刺激することなく血糖降下をひきおこすことから,膵外作用が主と考えられる。我々が以前より報告している膵外作用の候補下‐2.6‐P_2の増加に及ぼす影響を検討した。CS‐045はTolbutamide同様肝の6‐Phosphofructo‐2‐kinaseのKm値を低下させることにより、F2,6‐P_2の産生を促進することが示された。 (3) 肝糖新生系に及ぼすSU剤の影響についての検討: 糖新生の律速段階を担う酵素Phospho enol pyruvate carboxy Kinase (PEPCK)はインスリンやPhor bol esterによってその活性が低下することが知られている。トルブタマイドによっても2mM以上の濃度において1-5時間刺激すると、PEPCK活性はあらかじめcyclic AMPによって活性化された状態から、ほぼ非刺激時の活性にまで抑制された。SU剤のもつ膵外作用の可能性が示されたものと思われる。
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