研究概要 |
1)非SU系経口血糖降下剤CS-045は膵からのインスリン分泌を促すことなく血糖値を低下させる。血糖低下の機構は当然膵外作用に基づくことになり、平成4年度にひきつづき我々はそれ以前から検討を行っているSU剤による肝細胞での効果と比較検討した。その結果、CS-045はトルブタミドと同様にラット肝細胞において、fructose-2,6-bisphosphateを増加させ解糖系の律速酵素6-phosphofrukto-1-kinaseを活性化することを証明した。CS-045およびトルブタミドはいずれも6-phosphofructo-2-kinaseのKm値を低下させることによってfructose-2,6-bisphosphateの産生を促すが、CS-045はトルブタミドに比べて約1/100の濃度で数倍強い効果を発揮することがわかった。 2)膵外作用のもう一つの候補は糖新生の抑制である。ラット肝癌細胞株H4-IIE細胞においてトルブタミドは用量依存性に糖新生の律速酵素phosphoenolpyruvate carboxykinase(PEPCK)を抑制することを証明した。PEPCKの活性はそのmessengerRNA(mRNA)の段階で調節されていることが知られており、H4-IIE細胞においてトルブタミドがPEPCKのmRNA(RNA^<PEPCK>)に影響を及ぼすかどうか検討した。その結果、トルブタミドはPEPCK活性を抑制することが確認された濃度ないしはそれ以下の濃度で、RNA^<PEPCK>を低下させることがわかった。インスリンも同様にRNA^<PEPCK>を減少させるが、トルブタミドとは時間的経過が異なることから別の機序によるものと考えられ、現在検討中である。
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