研究概要 |
1)ラット肝細胞膜におけるSU剤の特異的な結合部位の同定。[^3H]glibenclamideをtracerとして、ラット粗肝細胞膜におけるSU剤の結合部位の同定を行った。その結果、肝細胞では親和性の低い結合部位が証明された。しかし肝ではこの親和性(Kd値)に一致した濃度のSU剤でfructose-2,6-bisphosphate(F-2,6-P_2)の上昇や、phosphoenolpyruvate carboxykinase(PEPCK)の抑制がみられるので、この結合部位がSU剤の膵外作用の発現に関与する可能性が想定された。 2)非SU剤CS-045によるラット肝細胞におけるF-2,6-P_2の産生亢進の証明とその機序の解明。CS-045は6-phosphofructo-2-kinaseを活性化することによりF-2,6-P_2の産生を促し、そのallostericな効果で6-phosphofructo-1-kinaseを活性化し、解糖系を刺激することがわかった。トルブタミドと比較したところ、その機序には共通の部分が多いことがわかったが、CS-045はトルブタミドの約1/100の濃度で数倍の作用を発揮することがわかった。 3)トルブタミドのPEPCKに対する作用の検討。ラット肝癌細胞株H4-IIE細胞においてトルブタミドは2mM以上の濃度で用量依存性にPEPCK活性を抑制することを証明した。PEPCKの活性はmRNAの段階で調節を受けることが報告されており、トルブタミドによるPEPCKのmRNA(mRNA^<PEPCK>)におよぼす影響を検討した。H4-IIE細胞ではcAMPによってmRNA^<PEPCK>は上昇し、インスリン添加によって対照以下に減少する。トルブタミドは0.5mM以上の濃度でcAMPによって上昇するmRNA^<PEPCK>をインスリン同様減少させるが、その機序はインスリンと異なることを示す現象が確認され、現在検討中である。
|