研究概要 |
1.ブタ大動脈内膜(内皮)からのエンドセリン変換酵素の可溶化と単離 エンドセリン(ET)変換酵素の本体は金属プロテアーゼ阻害剤であるホスホラミドンに感受性のプロテアーゼであることが判明しているが、内皮以外の組織ではbigET‐1を非特異的に切断する他のプロテアーゼが多量に含まれていることが明らかとなった。出発材料をブタ大動脈内膜(内皮)とすることで、費用、時間の節減と共に従来でのクロマトグラフィー法での精製法を確立することに成功した。即ち、約2000本の大動脈より内膜を剥離し、膜分画を調製し、LubrolPXで可溶化後、DEAE、レクチン(Ricinus communis agglutinin(RCA)およびPeanut agglutinin(PNA))、MonoQ,ゲル濾過(TSK3000SWXL)各カラム上で順次分画し、SDS・ポリアクリルアミド電気泳動上、120KDaの単一バンドとなる酵素標品を得た。膜分画に比べ約12,000倍の精製度であった。 2.精製エンドセリン変換酵素の性質。 精製標品の至適PHは6.8から7.4の間にあり、極めて狭いことが特徴であった。活性はEDTA、1,10‐フェナトロリン、ホスホラミドンで強く阻害されたが、チオルファンでは阻害されず、培養内皮細胞で検討されたエンドセリン変換酵素の性質に良く一致していた。また変換活性は比較的低濃度(10muM)の2価金属イオン(Cu^<2+>、Zn^<2+>、Co^<2+>、Fe^<2+>)で阻害されるのも特徴であった。酵素をEDTA処理後、2価金属イオンを添加する実験より、本酵素はZn要求性の金属プロテアーゼであると推定された。bigET‐1に対するKmは3.3muM、Vmaxは0.41mumol/min/mg proteinであった。また、bigET‐1誘導体を用いた実験より、bigET‐1のTrp^<21>とHis^<27>‐Gly^<34>が基質認識に重要であることが判明した。今後、部分アミノ酸構造を決定し、cDNAクローニングを予定している。
|