1.甲状腺細胞におけるTSH-cAMP情報伝達系について 継代甲状腺癌細胞株を用いてTSH受容体以降の情報伝達系の異常の有無を調べた。正常甲状腺細胞ではTSH→TSH受容体→Gタンパク→アデニールシクラーゼ→cAMPの経路が正常に働いている。一方、癌化した甲状腺細胞ではTSHによる反応性の低下が認められた。情報伝達系のどこの部位に異常が起こっているのかTSH、フォルスコリン、コレラ毒素を用いて刺激し反応を調べたところ、GタンパクとTSH受容体の結合障害の可能性があることがわかった。 TSH受容体を過剰発現させる実験系でもTSH-TSH受容体の結合増加にかかわらずTSH受容体-Gタンパク結合部以降の反応を認めることができなかった。同部の結合に必要な第3因子の欠損が甲状腺細胞の癌化に関与している可能性が考えられた。今後、ハイブリドーマ等を用いて欠損している因子の解明をすすめてゆく予定である。この結果はExperimental Cell Res、Endocrinologyに発表した。 2.甲状腺細胞におけるチロシンキナーゼ受容体情報伝達系について 甲状腺の癌化に関してはTSH-cAMPの情報伝達以外にチロシンカイネースを持った受容体が重要な役割を果たしている。その中でもret遺伝子と甲状腺癌の関連が特に注目されている。我々はret遺伝子の変異の有無について調べた。その結佳、甲状腺癌ではret遺伝子の転座の頻度は少ないことがわかり、又点突然変異については現在調査中である。既に髄様癌においてはエクソン16部の変異が存在することを確認している。この結果はEndocrinol Japonicaに発表した。
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