研究概要 |
IGF(IGF‐I,IGF‐II)は種々の細胞で生出され,autocrineあるいはparacrine的に作用して細胞増殖,分化に重要な役割を果たしている。一方,IGFは血中および組織中ではIGFと特異的に結合する蛋白(IGFBP)と結合して存在する。このIGFBPの役割は単にIGFのresevoirとしてだけでなく,IGFの作用を調節していると考えられている。腫瘍細胞においてもIGFおよびIGFBPが産出されているが,これらIGFsおよびIGFBPsが正常と異なっているとの報告もある。本研究では腫瘍抽出物および腫瘍患者の血中IGF‐I,IGF‐IIおよびIGFBPsのheterogeneityについて検討した。まず,低血糖を呈する膵外腫瘍(non‐islet tumor hypoglycemia;NICTH)について検討した。健常人では血清を酸処理し酸性条件下でゲル濾過(Bio‐Gelp‐60)すると,IGF‐IIの大部分は本来の分子量7.5kDaの部分に溶出するが,NICTHでは殆どが大分子量(約17kDa)のIGF‐IIで占められた。腫瘍中IGF‐IIも同様に大分子量のIGF‐IIであった。又,最近,開発したIGF‐IIのWestern immunoblot法による解析では、NICTHでは血清中IGF‐IIの殆どは11〜18kDaの分子量のIGF‐IIであり,症例により多少サイズが異なっており,これは糖鎖の違いによると考えられた。血中IGFBPsについてWestern ligand blot,Western immunoblotで検討すると,NICTHではIGFBP‐2の増加が認められた。また,腫瘍の摘出により低血糖の消失した症例では血中IGFBP‐3の増加が認められた。一部の症例ではIGFBP‐3のプロテアーゼ活性の増加が認められた。これらのIGFBPsの変化が低血糖の発症の機構に関係していると考えられた。低血糖を呈さない腫瘍患者血清中のIGFBP‐2は増加を認めた。今後,更に検討を進める予定である。
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