ラット培養FRTL-5細胞を、血清と甲状腺線激ホルモン(TSH)をのぞいて培養し、新たにT_3またはTSHを加えて培養した。細胞よりmRNAを抽出し、Northernブロット法にて5'脱ヨード酵素(5'D)mRNAの変動を検討した。T_3、TSHはいずれも5'DmRNAを増加させ、さらに、T_3とTSHを同時に加えるとmRNAは相乗的に増加した。また、mRNAと5'D活性は良く相関した。従って、T_3とTSHは5'DmRNAレベルを増加させることによって5'D活性を増加させると考えられた。 出生後の5'DmRNAと5'D活性の変化を、ラット肝と腎を用いて、オスとメスで比較検討した。オス胎児の肝5'DmRNAは殆ど認められなかったが、生後急激に上昇してadultのレベルに達し、その後変化しなかった。一方、メスの肝では同様に生後上昇したが、その後低下し、オスの約1/2のレベルとなった。腎5'DmRNAは肝のそれより低く、生後ゆるやかに上昇した。腎では性差は認められなかった。5'DmRNAと5'D活性は有意に正相関した。これらより、生後の5'D活性の変化は臓器、および性別によりmRNAレベルで異なった調節を受けていると考えられた。5'DmRNAに及ぼす性ホルモンの影響については今後の詳細な検討を行う予定である。 ラットにストレプトゾトシンを投与して糖尿病ラットを作成した。この時、血中T_3・T_4濃度はコントロールラットより有意に低下し、さらに、5'D活性及び5'DmRNAの低下が認められた。従って、低T_3症候群での5'D活性の低下に5'DmRNAの低下が関与していると考えられ、さらに現在検討中である。
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