赤芽球造血にかかわる増殖・分化因子及び、赤芽球造血微小環境を構成する分子を同定することを目標として研究を進めた。赤芽球側の問題としては、インデグリンファミリーのなかでVLA-4とVLA-5が赤芽球で発現していることが分かったが、機能的な役割を担っているのはVLA-4のみであることを明らかにした。また、VLA-4のリガンド分子として知られているVCAM-1とフィブロネクチンの関与を調べた結果では、支持細胞にはこれらのリガンド以外の分子が存在する可能性が考えられた。微小環境の因子を同定するために、赤芽球の分化・増殖を支持する支持細胞の膜抗原に対する単クローン抗体を作成し、機能阻害によるスクリーニングの結果、数クローンの阻害抗体を得ることができた。これらの阻害抗体が新規のVLA-4リガンド分子である可能性を確認するため、得られた阻害抗体をウエスタンブロットで調べた結果ではそのほとんどがVCAM-1にたいする抗体であった。今回、新たなリガンド分子を発見するには至らなかったものの、これにより、以前我々が明らかにしたSCFの関与に加え、VCAM-1が支持細胞の機能分子の一つであることが明らかとなった。これまでの研究で、赤芽球の分化・増殖にはサイトカインであるエリスロポイエチンの外に、造血微小環境側からの機能分子としてSCF、VCAM-1が作用し、それぞれc-Kit、VLA-4を活性化することにより、赤芽球の分化・増殖を促進することが分かった。今後、VLA-4の新規リガンドを探索し、分子を同定する一方、それぞれの因子の情報伝達機構をも解明して行く予定である。
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