前年度までに我々は骨髄中に存在するCD34-CD33-CD25+Lin-(CD3、CD16、CD56陰性)の細胞分画にはIL-2に反応してNK細胞に分化できる前駆細胞が存在するが、純化したCD34+Lin-細胞分画からはIL-2だけではNK細胞は分化してこないことを報告した。ところがCD34+Lin-細胞をストローマ細胞と共培養するとIL-2の存在下でNK細胞が分化してきた。これは造血幹細胞からNK細胞が分化するにあたり、IL-2に加えてストローマ細胞が産生するなんらかの因子が必要であることを示唆している。そこで本年度はストローマ細胞の代わりに種々のサイトカインをIL-2と組み合わせてCD34+Lin-細胞分画からNK細胞を分化させることを試みた。 FACSで正常人骨髄よりCD34+Lin-細胞を分離回収し、IL-2とGM-CSF、G-CSF、IL-1、IL-4等のサイトカインを組み合わせて培養したところ、IL-2とSCFがあればストローマ細胞なしでもNK細胞が分化してくることが明らかになった。これらのNK細胞は形態学的にも、またK562を標的としたキラー活性を持っているという点でも、CD56、CD16陽性という点でもNK細胞であることが確認された。さらにCD34陽性をCD33によってさらに陽性、陰性に分画した。興味深いことにIL-2とSCFの存在下でNK細胞はCD34+33+細胞分画からは分化してきたが、最も未分化なCD34+33-分画からは分化してこなかった。しかしCD34+CD33-分画の細胞をIL-3とSCFの存在下で一週間培養し、その後IL-2を加えることによりNK細胞を得ることができた。以上のように、本年度の研究を通じてNK細胞を骨髄造血幹細胞から分化させる系を確立し、NK細胞が造血幹細胞由来であることを直接的に証明すると同時に、その初期分化の段階で必要とされるサイトカインを同定することができた。
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