研究概要 |
同種骨髄移植における血管内皮障害の基礎的,臨床的研究を行なってきた。 臨床的研究として,本年度は当科にて同種骨髄移植を施行した21名患者について血管内皮細胞障害のマーカーである血中トロンボモジュリン(TM)を測定し,移植経過中に血中TMの変動と間質性肺炎,肝中心静脈閉塞症,生着片対宿主病(GVHD)などの合併症との関連のについて検討した。その結果,I)移植後,合併症のみられなかった症例では,経過中の血中TMはほぼ正常範囲内であった。2)間質性肺炎,肝中心 静脈閉塞症,生着片対宿主病(GVHD)などの合併症を併発した際,発症にさきがかて血中TM値は上昇する傾向がみられ,高値を示し,臨床症状と並行して変動した。そして症状の軽快した例では,血中TM値は低下し正常化した。3)血中TM値は,組織破壊因子(TNF)との間では正の相関関係が認められた。以上の結果から,血中TMは,同種骨髄移植後合併症を予測するうえで有用で,重症度の一つの指標になる可能性が示唆された。 基礎研究としてラットのGVHDモデルを作成し,その血漿第VIII因子凝固活性,第VIII因子関連抗原およびリストセチンコファクターを測定した結果,対象群に比し,明かな上昇を認めた。 骨髄移植前処置として使用される放射線照射による肺障害を検討するために8週齢のウィスターラットの肺に20Gyの放射線照射を行い,その血漿第VIII因子凝固活性,第VIII因子関連抗原およびリストセチンコファクターを経時的に測定した。その結果,血漿第VIII因子は照射後3日目に著しい増加が認められ,照射による血管内凝固亢進状態の反映の可能性が考えられた。 以上の結果はこれまで知られていない新知見である。
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