研究概要 |
臨床研究として、本年度は平成4年度に認められた血清トロンボモジュリンと骨髄移植後におこる間質性肺炎,肝中心静脈閉塞症,移植片対宿主病など,重篤な合併症との関連性を多数例で確認した。特に肝中心静脈閉塞症などの併発例では発症直前から血清トロンボモジュリンの上昇傾向が認められ,血清トロンボモジュリンは骨髄移植後合併症の発症を予測する上で有用な指標になると考えられた。基礎研究として,ラットを用いて,移植後合併症とトロンボモジュリンの関連性を以下のように確認した。1)ラット肺に20GyX線照射(線量率5Gy/分)し,照射前から経時的に採血し,血清トロンボモジュリンを測定すると同時に肺病理組織標本をつくって、間質性肺炎を有無を観察したところ,ラットの放射性肺炎は20Gyの一回照射では6-8週後に必発であり,照射後の血清トロンボモジュリンは二峰性の増加を示した。一つ目の照射後1日から2日にかけてみられる急峻なピークは放射線によるフリーラジカル、過酸化脂質によって起きた血管内皮障害と考えられるが二つ目の上昇は間質性肺炎の発症との関連が考えられた。2)ラットのGVHDモデルは,組織適合性抗原の異なるFisherとDAを交配することによりF1を作成し,このF1を宿主としてFisherよりの脾細胞を輸注することによりGVHDを誘発した。この系において,組織壊死因子とともにトロンボモジュリンの血中濃度の上昇が認められた。また,GVHの強度と血清トロンボモジュリン濃度との相関も認められた。
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