研究概要 |
7種類の抗原受容体遺伝子はそのいずれもが遺伝子レベルで再構成を起こす.リコンビナーゼによって認識される部位には共通の塩基配列が存在するため低頻度ながら正常リンパ球においても異なった遺伝子間でトランスに再構成を起こすことがあることおよび先天性免疫不全状態(Ataxia tclangiectasia)ではこのトランス再構成が高頻度に観察されることを我々は明らかにしてきた.我々はさらに癌遺伝子であるbcl-2遺伝子とこれらの抗原受容体遺伝子とのトランス再構成の有無を検討した. 癌遺伝子bcl-2の高頻度切断部位の5側の25merと免疫グロブリン重鎖のJ領域共通塩基配列25merとをprimerとして30回のPCRを行なった後に内側のOligomerをProbeとしてSouthern blot hybridizationを行なった.摘出された反応性肥大扁桃10検体中5検体で再構成産物が検出され,またPCRを同じ検体で10回以上繰り返し行なって細胞あたりのトランス再構成の頻度を計算したところ10^6個の細胞あたり0-3.2でありこの頻度は米国人からの摘出扁桃と同様であった。クローン化してさらに塩基配列を決定したところN-regionを鋏んでおり,抗原受容体遺伝子の再構成の過程でトランスに再構成が生じたものであることが確かめられた. ろ胞性リンパ腫では癌遺伝子bcl-2は免疫グロブリン遺伝子との再構成が生じており,本邦では欧米に比して著しく発生率が少ないことが知られている.しかし我々の検討でbcl-2と免疫グロブリン遺伝子のトランス再構成の出現率が欧米人と日本人とで同じであることは,さらなる遺伝子変化がろ胞性リンパ腫の発生に必要なことを示している.免疫不全状態でしばしば発生するリンパ性腫瘍との関連を知る目的で現在までに集めることのできた免疫不全状態である骨髄移植後の症列およびATL,HIVキャリアーでこれらのトランス再構成を検討している.
|