血小板無力症患者のうち、GPIIb遺伝子について複合ヘテロの異常を有すると考えられる第2例目の症例(Jung et al Blood71:915、1988)と、1型(GPIIb‐IIIaが欠損)の2症例について、遺伝子解析を進めてきた。 1.GPIIb遺伝子について複合ヘテロと考えられる症例の解析 PCR法により遺伝子解析を行った結果、GP2b遺伝子について、第1例目と同一のエクソン2bのスプライス変異(Kato et al.Blood79:3212、1992)が検出された。この変異はエクソンスキップをきたし、エクソン26によりコードされる42個のアミノ酸を欠いた異常GPIIbを生じるが、プロテアーゼによる切断部位を欠き、GPIIIaと安定なヘテロダイマーの形成ができないため、小胞体内で破壊されると考えられる。また、この変異は、父親由来であることが確認され、ウェスタンブロットの解析結果と一致した。もうひとつの変異に関しては、エクソン27内に1ヵ所点突然変異が検出されており、この変異がGPIIbの発現異常をきたす原因となる変異であるか、現在、解析を進めている。 2.1型患者の解析 GPIIb‐IIIaの欠損を示す1型患者2例について、サザンブロット分析を行ったが、GPIIb、IIIa遺伝子とも異常を認めなかった。また第1例目の複合ヘテロ患者で発見されたGPIIb遺伝子のエクソン17、26の変異も検出されなかった。血小板無力症の大半を占める1型の患者では、これまでの方法では変異がGPIIb、IIIa遺伝子のいずれに存在するか、予測が不可能である。従って、変異部位を迅速にスクリーニングする方法の開発が必要であり、現在、PCR-SSCP(single strand chain polymorphism)法について検討中である。
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