急性骨髄性白血病のうち、染色体異常の占める割合は高く、これがある白血病に特異的な共通遺伝子異常として認められているものの数は年々増加している。この中には既に遺伝子異常が白血病の原因として(1)癌遺伝子の活性化に関与するもの(2)細胞の分化・増殖の因子もしくは受容体の活性に関与するもの(3)転写促進に関与するものなどが発見されている。本研究ではさらに(4)癌抑制性物質の欠失に関与する遺伝子の同定を目的として、急性骨髄性白血病の中でも第9染色体長腕(9p-)の欠失症例に注目し研究を行なった。 研究の方法は、 (1)おもにサザン法による多型性遺伝子を用いた欠失領域の同定 (2)PCR法による欠失遺伝子の検出 を行ない、検討し得た4例中の1例に極めて特異的な欠失遺伝子を同定した。また欠失遺伝子領域の単離を試みたが現在のところ完全な遺伝子は発見できていない。さらにこうした共通した遺伝子欠失を有する症例について臨床像や白血病の細胞学的特異性について検討した。FAB分類でM1が2例、M5が2例であり寛解後の予後は比較的良好である点が特徴的である他は特異的な徴候は認められなかった。今後、欠失遺伝子を完全な形で単離することに全力を挙げるとともに、他の欠失遺伝子領域の検出に努める予定である。
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